朝食啓発プロジェクトのために、サンドイッチの中身を作った。
卵サラダは簡単だった。
茹でて潰して、マヨネーズを混ぜるだけ。
茹で上がって水で冷やした卵が入った鍋を管理人が見ている。
だから「次、どうすると思う?」と聞くと「剥くんですか?」と質問される。
だから「判っているなら、お願い」と頼むと、彼はひたすら夢中で剥き始める。
料理に関して、彼の頭がどうなっているか想像するのは難しい。
料理経験の無い人だから、段取りのイメージもつかないのだろう。
でも、彼の人間性は「善」であることは間違いない。
ただ、疑り深い。
ジャガイモを「茹でない」で作る私の言葉を最後まで疑っていた。
「これ食ったら、もうポテトサラダを作る時に二度と皮剥いて茹でないよ」と何度も説明する。
それでも信用しない。
だから、出来上がってから食わせた。
一発で理解した。
もともと、話が合うのは、彼と食いしん坊だからだ。
舌の性能は悪くない。
出来立ての熱々のポテトサラダ。
まあ、言葉は不要だ。
夕食を食べた後なのに、準備した朝食用のパンを一枚失敬してトーストしている。
「これ、本当においしいですねえ」という言葉、何度繰り返されたか。
朝食用、陽気な住人用、そして管理人用に分けた。
少し余ったから自分用にも分けた。
次の朝、眠い目を漉すって朝食担当の応援に行く。
カウンターの下にポテトサラダが余ってるのは、彼女の分だろう。
朝食を食べてる住人もサラダが旨いと喜んでいる。
美味しいものを一人で食べてもいい。
でも、みんなで分け合えば、もっといろんなものが生まれる可能性がある。
それが、食べ物の力だ。
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