実家にはしょっちゅう帰るが、母にお土産など買わない。
だって、甘いものが嫌いだから。
今回も、実家に戻るためのバスの時間までまだ間があったが、お土産など買う気はなかった。
でも、途中にデパートがあるから、自然と地下食品街を覗いてゆくことにした。
時間が余れば、たいていデパートの地下街に行く。
ただ、食いしん坊の本能がそうしているのかは判らない。
そこで地味な出店を見つけた。
エレベーターの傍にイベント的に展示されていた店。
飯鮨(いずし)を試食させている。
こりゃあ食べないでいられないでしょ。
飯鮨とは、ご飯と魚・野菜・麹を混ぜて乳酸発酵させる漬物の一種。
市販のもので旨いものを食ったことがない。
有名店であっても「この値段で二度と買うもんか」という味ばかりだ。
でも、この店、ちょっと違った。
添加物は一切なし、冷凍していない。
ショーケース2つにあった飯鮨の他に、私の目を引いたのは「大吟醸の粕漬け」だ。
鮭とタラがある。
一切れ300円。
でも、大吟醸の酒かすで漬けられた切り身だ。
こんなもん、ほとんど食べられない。
魚の味を試すためにも飯鮨の試食をさせてもらう。
これも、旨い。
やばい。
財布の紐が緩み始めた。
結局、切り身2つと飯鮨2種類を買う。
「母の土産に」と自分に言い訳したが、実際は自分が食いたくて買った。
これが絶品だった。
母が狂喜したことは言うまでもない。
有名でもない有限会社だけど、本物を作る会社だ。
食えば判る。
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