2020年4月29日水曜日

食べられるから、食べ物?

こういう今の食べ物の話もシェフとは意見が合った。シェフのところではパンは知り合いのパン屋から仕入れていたから、この話をするとため息交じりに「みんな値段しか見ないからなあ」とつぶやいた。
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2019年4月8日
先日、珍しくスーパーのパン売り場を覗いた。基本、パンは、パン屋で買うか、自分で焼くか、のどちらかしかない。スーパーのパンは買わなくなって20年以上経つ。
そもそも、イーストフードを体に入れると、頭痛がするので、特定のパン屋のパンしか食べられない。
コンビニのサンドイッチなど論外だ。

そんな私が、夜も遅く、冷蔵庫に余ったチキンサラダをどうしてもサンドイッチで食べたくなり、スーパーのパン売り場を徘徊した。

で、驚いた。食パン6枚切りが85円とかで売っている。2度見したが、やっぱり一袋100円以下だ。

思わず手に取って食品表示を見た。小麦粉とパン酵母以外、理解できそうな食材が使われていない。
もちろん、イーストフードは入っているはず。

ここで思ったのは「これをパンと呼んで良いのだろうか」ということだった。
確かに大手パンメーカーの作った食パンの形の食べ物である。

たしかに、昔も安かった。パン屋の食パンは一袋200円以上だったが、スーパーでは、150円程度だった。
給与が少なかった若いころは時々買っていたが、頭痛がするので買わなくなった。

1990年代、アメリカのスーパーに「ワンダーブレッド」という大手メーカーが作るパンが売られていた。
貧しい家庭の主食と言ってもいいほどの値段だった。今もきっと売っていると思うが、友人はそれを「あれはパンじゃない」と言い切った。パンの味が何もしない、というのがその理由だった。

たしかに、安かった。貧乏学生の自分もその安さでランチ用のサンドイッチとして買ったことがある。
甘味が付いたスポンジみたいな歯ごたえで、パンらしい味は何もしなかった。
あれから30年近く経った今、そのような「パン」に誰も疑問すら持たない。

安いから買う。これは理解できる。でも、私はこの商品を「安いから」と言って買うことは絶対にないだろう。

何故なら、パンの形をしていても、パンとは思えないから。
「パンだ」と思えば、パンなのかもしれない。パン会社が作っているのだから。

でも、私にはこの「食べられる物」を体の中に入れること自体が恐ろしい。

怖いことに、飲食店で提供されるものには、原材料を表示する必要すらない。
どんな食材を使っているかは価格から推測する以外ない。

オランジュは、マヨネーズも自家製だ。しかも、それも本物の卵を割って作っている。
だから、そんな心配は不要だが、他の「安くて美味しい飲食店」はどうなのだろうか。

飲食業は、(閉店するのも早いけれど)簡単に開店できる。業務用の食材もいろいろ開発されている。
それなりに安くて美味しければ人が来るだろう。

でも、そこで食べるものは本当に「食べ物」なのだろうか。
「食べられる物」であることは間違いない。腹は壊さないのだから。

そんな「食べられる物」があちこちに出てきている。

「食べる」か「食べない」か、は個人の自由だ。
砂糖もそうだが、販売は違法じゃない。大量の砂糖が塗されたドーナツを作るのも自由だ。
同じように、遺伝子組み換えされたトウモロコシで作られた甘味料をどれだけ使って新しいソーダドリンクを作るのも自由だ。それを「激安飲み放題」とPRしてお客を呼ぶことも自由だ。

飲食店経営者が「食べ物」ではなく「儲け」しか考えない店であったとしても、私達が利用すればその存在を支えることになる。つまり、その「食べられる物」も支えていることになる。

消費者が「安さ」だけで選択するほど愚かなら、大企業は儲けるために、どこまで行くのだろうか。

外食産業が発達した現代、食べ物が手軽に手に入るリスクは、かなり大きいとしか思えない。
WEB時代だから「知らない」というリスクではない。自身の体の中に入れるものに対して「気にしない、考えない」という「無関心」というリスクだ。

体は「食べた物」で出来ている。

20年後の自分の健康は、今、毎日食べる物の積み重ねだ。「何を食べるか」は、繰り返すことで習慣になる。
「安さ」だけで選び、食べ続けた結果、健康診断の再検査に招待されるのは、自分自身だ。

その頃、大企業は「安い」だけで買い続けた消費者によって、大儲けしているはずだ。

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マヨネーズを作るのは、それほど難しくない。でも、一旦作れば、その油の多さに驚いて二度と常備しようなんて思わないはずだ。
私も、今はマヨネーズが本当に必要な時だけ作るようにしている。大企業のマヨネーズを常備すれば手軽に消費してしまう。食べ物が美味しくなるから使用量も増える。

このサイクルにおいて、大企業は儲かり、消費者の健康は悪化する。何故なら、大量の油は健康を害することは様々な研究発表からも明白だ。

だからこそ常備しないことが重要になる。

安くて美味しい。だから食べるべきか、を判断するのは自前の脳みそにゆだねられている。もっとも、欲望の前に、脳みそが機能停止になることも少なくないけど。


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