2020年4月21日火曜日

「デート」と「ロマンス」

シェフの店では、毎月イベントを実施していた。これは、2月のバレンタインイベント終了後にシェフの思いをお客様に伝えたくて書いたもの。
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2019年3月10日
店では2月に「バレンタイン応援ディナー」という期間限定のイベントを実施した。
それは、コースディナーB以上を二人で予約するとそれぞれ、2杯づつ、合計4杯分の飲み物が無料になるというものだった。

それぞれ2杯も無料なんて「ずいぶん気前がいいな」と思ったのでシェフにその目的を聞いた。
「若い人がこういう店に来て、ディナーに飲み物を頼むとかなり高額になってしまう。だから、バレンタインデーの時くらいは、俺も応援するから、男性も頑張って背伸びして来て欲しい」とのこと。

だから、沢山予約が入った、ならうれしいが、そんなことは無い。でも、シェフの目論見通り、何カップルかを「応援できた」とのこと。

そのうちの一カップルをワイン会の時に見かけた。20代か30代、まだ若いカップルだった。

私が鹿肉に目の色を変えている時、二人が会計の方に向かっていった。
あまりに幸せそうな雰囲気だったので、その時だけ鹿肉から目が逸れた。

女性はドレスアップしてとてもかわいかった。そんな彼女を若い男性はエスコートしてちょっぴり誇らしそうだった。たぶん、デートだろう。本当に素敵なカップルだった。

レストランは、ただ空腹を満たす場所だけではない。大切な記憶を作る場所でもある。男性は(彼女のためじゃあないかもしれないけど)素敵なレストランを予約した。女性は(彼のためじゃあないかも知れないけど)ドレスアップした。お互いを思いやる気持ちが通じていれば、きっと素敵な時間を過ごした(と思う。)

デートに「効率」と「割り勘(公平性)」を求めることが間違っているとは思わない。でも、そこから「ビジネス」は生まれても「ロマンス」は生まれないだろう。

一緒に食べる時間が「ビジネス」になったら重要視されるのは「価格」だ。そして「対費用効果」。もちろん自分自身にとっての「費用効果」だ。

ならば、そのような時間を「デート」と呼んでいいのだろうか。

昔は簡単だった。デートで食事をするのは、少なくてもロマンチックな関係に発展するかどうか、お互いで作り出す化学的反応の量を探り合う時間だった。それに対して「対費用効果」なんて考えたこともない。
結婚だって同じだろう。損得だけで一緒に暮らしてその先に家族ができるとは思えない。子供はできるかもしれないけど。

今は「ロマンス」が生まれ難い時代だと思うけれど、デートに「ロマンス」が無くて、何故一緒に飯を食うのだろう?

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私が予約の結果を聞いた時、嬉しそうな彼の顔が浮かぶ。来客数からみれば、決して成功したイベントではなかったから笑顔は苦笑いだったけど。

でも、このお客様を接客すれば、彼の嬉しそうな顔も理解できる。

あの寂しそうな笑顔はとても彼らしかった。

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