2020年4月5日日曜日

鹿肉キター

ワインがあまり飲めなくても、体験すること以上の学習は無いことは知っている。

だからこそ、いろいろな所に頭を突っ込んできたけれど、ここのワイン会ほど「なるほど」と思うことが多かった会はない。

それほど、知的好奇心も満たされたということ。
でも、この好奇心、食欲ほどは強くない。

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2019年3月2日

ほとんど飲めないけど、オランジュ主催のワイン会に参加した。

昔、長野のペンションでメルシャンに勤めていた人がやってくれたワイン会に何度か参加し、赤ワインと白ワインには、色以上に違いがあることを学んだ。
また、いろいろなワインを比較して飲むことで自分の好きなワインがなんと呼ばれているものかも学んだ。

それしか学ばなかったけど、その後の人生において役立つ時がしばしばあった。

つまり、私にとってのワイン会は、異なるワインを数種類味わって舌と好奇心が十分満足できるという絶好の機会である。

たしかに、いつも食べるディナーより少し高い会費だ。でも、いつもは食べるだけ。
今回は、何種類ものワインはもちろん、シェフの料理付きだ。
間違っても、調味料の味しかしないタイ産のから揚げなど出てこない。

ワインだって、体験無くして学習無し。
以前だって、複数のワインを比較できたから味の違いを理解したのだから。

そのワイン会、一人遅れて行ったら、なんとお誕生席だった。
もっとも、一人で参加するから仕方ない。

知らない人ばかりの中に、遅れてここへの着席はかなり緊張した。

で、前菜がすでに置いてある。
お誕生席からはちょっと離れていたので、少ししか食べられなかった。
皆さん、気を使って取り分けて下さったけれど、やはり立ち上がって2回目をよそうには気が引けた。

美味しそうな前菜が目の前から消えて行くことに少しだけ残念な思いはあったが、まだメインがあると判っていた。

そして出てきた。

鹿肉だ。
しかも、ソースが違う。

思わず万歳した。

マネージャーは笑っている。私がそんなにこの肉が好きなのか知らなかったらしい。

自分だって知らなかった。

このシーズン、初めてオランジュの鹿肉を食べるまで硬くてちょっと獣臭い肉だとしか思っていなかったし。

今回のソースは、赤ワインを干しブドウと煮詰めた甘めのソースだ。
これが出された赤ワインと絶妙な風味を作り出す。

ソースを絡めて噛み締める鹿肉と、そのワインをすすれば口の中は至極の「マリアージュ」だ。
こんな体験をしてしまえば、ワインあっての料理は当たり前になる。
味も風味も数倍、複雑なものを楽しめる。

ほとんど飲めない私ですらそう思えるのだから、飲める人には天国だろう。

ある参加者は、全部の試飲が終わった後、食事をしながら、8種類のすべてのワイン、再度、味の確認をしていた。

うらやましいと思うが、自分のアルコール許容量を知っているから無理はしない。

でも鹿肉は別。アルコールじゃないし、自分の胃の限度はよーく知っている。

皆さん、前菜を十分に召し上がったようで、あまりメインに食が進まない。
いやしいとは思いつつ「もう食べないのですか」と確認しながら、ほとんど一人で平らげてしまった。
だって、これを残すなんてありえない。だって肉質もソースも絶品の一皿なのだから。

このシーズン3回食べた鹿肉、すべてソースが違った。

シェフっていったいどれだけレシピの引き出し持っているんだろう・・・。

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普通の食材も極上の一皿に仕上げることができたシェフだったが、彼が喜んで料理するのは、こういう特別な食材だったような気がする。

食材の保存から料理の方法まで、すべてを理解し、衛生的な取り扱いを徹底して初めて目の前の一皿になる。技術はもちろん、料理への情熱無くして続く職業じゃない。

そんな職業は、過去の遺物になりつつあるのかもしれない。

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