年末の正月料理のシーズンだ。
御節料理という分野に目ざめたのは、ばあちゃんが入院した年だった。
彼女が作る美味しい御節が食べられなくなった年だ。
当時は、実家に帰りもせず都会のばあちゃんに正月料理をおすそ分けさせてもらっていた。
その彼女が股関節を骨折し入院。
正月を病院で過ごすことになった。
じいちゃんが5000円渡してくれて「これでデパートで買って来い」と言われた。
でも、この金額でデパートの御節は買えない。
だから、自分で作ることにした。
本のレシピを読んでとりあえず作ってみたら、むちゃくちゃ旨い。
そして、すごく簡単だ。
じいちゃんと二人だけのお正月をして、それを食わせたら彼が最初に言った言葉。
「ばあさんにも食わせてやりたい」だった。
当時、ばあさんの正月料理をあてにしていたのは私だけではなかった。
娘は何一つ料理せずにタッパを持ってやってくる。
孫はお年玉を貰うため付いてくる。
その年、彼らも私の御節を食べたら「来年からはばあちゃんが作らなくてももいいね」と言われた。
次の年も私が作った。
娘夫婦は、だんだん図に乗って2年後はタッパを持ってやって来た。
何一つ作らず私が作った正月料理を食いながら「去年より腕が上がったな」とのたまった。
次の年から、実家に戻ることにした。
今、別の親戚のために料理する。
彼らは、感謝の言葉と共に、猛烈に食べてくれる。
食事をすること以上に、相手と付き合う価値があるかどうかを判断できる機会は無いだろう。
食べる方も、作る側も、いっしょに食事をすることで判ること、本当にたくさんある。
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