朝食にパンを食べたくなった。
だから、夜遅く、材料を計量して機械に放り込んだ。
すると小麦粉が足りない。
すでにいくつかの材料は投入済みだ。
薄力粉はある。
でも、これは論外だろう。
夜も遅く、スーパーに買いに行く気分でもない。
色の茶色い地粉はある。
これをいれすぎると「あまり膨らみません」とパンメーカーには書かれている。
同じ小麦粉だ。
パンにはなるだろう。
だから、強力粉の代わりに放り込んだ。
しかし、読みが甘かった。
朝、出来上がりのブザーを目覚まし代わりに、寝ぼけた目で蓋を開けると、そこにあるのは黒い塊だった。
どう見たって、牧場のあちこちで見かける「牛が落としてゆくもの」にしか見えない。
たしかにパン焼き器に入っていたものだが、これを「パン」と呼ぶには、パンに失礼な気がした。
これは、食べものだろうか。
自分の作ったものだけど、疑ってしまった。
ほとんど膨らんでいない。
恐る恐るナイフを入れる。
ちゃんと切れるけど、まあ、硬いことこの上ない。
スライスしたものを齧ってみる。
味はめちゃくちゃうまかった。
精製した小麦粉から出来るパンより、断然味わい深い。
ただ、パンらしくないだけだ。
そういえば、ドイツなどのハードパンもとてもおいしい。
ただ、総入れ歯の人間(私)には優しい食べ物じゃあない。
ともかく、膨らんでないから、薄くきることはできる。
これはこれで結構おいしい。
ただ、意図的に作るか、というと微妙だ。
だって、焼きたてパンの夢見るような匂いを出しながら、蓋を開けると、牧草に落ちてる黒い塊なんだから。
私の美意識はこのギャップに耐えられそうもない。
0 件のコメント:
コメントを投稿
注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。