実家に戻ると、母の冷凍庫は庭のあんずの木になった実でいっぱいになっていた。
「結構、硬かったしあんまり甘くない。」と話す母。
冷凍されたものをかじっても、よく分からない。
冷たいだけで、とてもおいしい代物とは思えない。
冷凍庫を占領させることもできないので、全部溶かしてジャムにする準備をした。
でも、解凍された杏を食べると、程よいやわらかさになっている。
そしてものすごく旨い。
たしかに、甘みは少ないのだが、味がとてもいい。
失敗した!と思った。
冷凍しておけばいつでもこのおいしい杏を食べられたのに。
冷凍後だったら皮だってそのまま食べられる。
アイスの上に散らせば、劇ウマのデザートになったのに。
どんな果物でもそのままが一番旨いのに。
後悔先に立たず。
母の言葉を疑いもしなかった自分が馬鹿だった。
仕方がないから、調理した。
甘みに味が殺されないように砂糖を少なくしたフルーツソースにする。
保存はほとんど効かないが、甘みが少なければ毎朝のスムージーにも使える。
ジャムを作ろうと思っていたので、ビンはすでに煮沸してある。
解凍すると、杏内にあった水分が溶け出してきた。
水は一滴も入れる必要がない。
プロセッサーで砕いて味見をすると酸味がかなり強い。
砂糖を入れないと保存が利かないので重量の10%位の砂糖を入れた。
味は「丸ままより落ちているなあ」と思った。
そうやって作った杏のフルーツソース、今朝スムージーに豪快に入れた。
パイナップルと一緒に。
むちゃくちゃ旨い。
ヨーグルトの酸味とパイナップルの酸味。
酸味の三位一体だ。
結論。
旨いフルーツに、長期保存の心配は不要だった。
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